"知識もさしてなく、仕事ぶりもお粗末であって判断力や行動力が欠如していても、マネジャーとして無害なことがある。しかし、いかに知識があり、聡明であって上手に仕事をこなしても、真摯さに欠けていては組織を破壊する。組織にとって最も重要な資源である人間を破壊する" - Management (Essential 2001)
良いことかどうかは別として、少なくとも自分は無害なマネジャー足りえるかもしれない、と思える一方、有害なマネジャーにならないために持つべき真摯さとは一体何か?については、ドラッガー自身も述べている通り、難しい設問である。本書では「マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如」を5つ定義している。そのことには深く同意する。しかし、そもそも人が人に対して真摯たろうとするとき、それは相手との信頼関係の度合いや、相手の有する真摯さの定義、に相当依存してしまうようにも思える。
あることを受けたときに、そのことを人が理解できるか、理不尽と思うか、その境界線は常にひどく曖昧で、繊細なものだ。知らないうちに人を傷つける、また人に傷つけられる…ひょっとするとすぐれたマネジャーという人はそうした人と人とのコミュニケーションの深層をよく見、聞きそして自ら会得して糧としている人なんだと思う。真摯さを得るためには、へこむこともへこませることも含めて、豊富なコミュニケーションの裏付けが必要かもしれない。